○対馬市市民基本条例

平成23年12月22日

条例第38号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第3条)

第2章 まちづくりの基本理念及び基本原則(第4条・第5条)

第3章 市民、議会及び行政の責務と役割(第6条―第12条)

第4章 市政運営(第13条―第21条)

第5章 情報共有、参画及び協働(第22条―第29条)

第6章 住民投票(第30条)

第7章 対馬らしさの追求(第31条)

第8章 条例の検証及び見直し(第32条・第33条)

附則

私たちの島、対馬は、古の時から大陸との人、モノ、文化の交流の窓口となり、時代の局面の架け橋として、海峡に位置する独特な地理的環境をもって歴史をつなぐ重要な役割を果たしてきた。また、島という環境が希少価値のある多様な動植物の命を育み、絆で支え合う人々の生活、豊かな自然の恵みからなる産業、個性と特色ある文化を生み出してきた。

そして、島内外との多様なつながりの中で生きてきた対馬の先人たちは、大陸との交流や日々の暮らしの中から得た知見を今でも私たちに伝えている。中でも雨森芳洲の「誠信交隣」や陶山訥庵、賀島兵介の偉業等は、時代を超えた今でもあせることなく私たちの中で語り継がれてきた。

私たちは、このような風土から育まれた「対馬らしさ」を大切にしつつ、また、自然への畏敬の念やもてなしの心、思いやりの気持ち、地域の絆や人とのつながりを忘れることなく、すべての人に居場所と出番が保障され、あらゆる分野において生きる喜びを実感できる島となるように、将来に引き継いでいかなければならない。

そのためには、同じ島に生きる人々の絆を紡ぎ直し、明日を担う世代が誇りを持って「私の故郷は対馬」と胸を張れるように、市民がこれからの時代を生きる当事者として、これまで以上に市政に関わる新たな仕組みづくりが必要である。

そこで、更に市民協働を推進し、地域の自主性及び自立性を確立するために、市民、議会、行政のそれぞれの役割や責務を明確にするとともに、これからの私たちが主体的に目指すまちづくりの方向性を示す最高規範として、ここに対馬市市民基本条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、対馬市における個性豊かで活力に満ちた社会を構築していくために、基本理念及び基本原則を明らかにするとともに、市民、議会及び行政の役割と責務並びに情報共有並びに市民参画及び協働による自治の基本的事項を定めることにより、地域の自主性及び自立性を目指した市民主体のまちづくりの実現を目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市内に住み、若しくは勤める者又は市内に事務所を有する法人若しくは市内で活動する団体等をいう。

(2) 行政 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいう。

(3) まちづくり 市民が安心、安全に暮らし、心豊かに生活できる環境をつくるため、市民、議会又は行政が行う公共的な活動をいう。

(4) 市政 まちづくりのうち、議会又は行政が行う活動をいう。

(5) 参画 市民が市政及び地域のまちづくりに主体的に関与することをいう。

(6) 協働 市民、議会及び行政並びに市民相互が、互いを理解し、対等な立場で、それぞれの責任と社会的役割を踏まえ、共通の目的達成のために共に取り組むことをいう。

(7) 行政評価 行政が実施している政策、施策又は事務事業について、成果の目安等を用いて有効性、効率性及び必要性を評価することをいう。

(8) 個人情報 個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう。

(9) パブリックコメント 行政が市の基本的な政策等の策定に当たって、広く市民に、意見、情報、改善案等を求める手続をいう。

(条例の位置付け)

第3条 この条例は、まちづくりの基本的事項を定めるものであり市民、議会及び行政は、この条例の趣旨を最大限に尊重しなければならない。

第2章 まちづくりの基本理念及び基本原則

(まちづくりの基本理念)

第4条 まちづくりは、市民、議会及び行政が一体となって行うものとする。

2 行政及び議会は、市民の信託に基づき、個人の尊厳及び自由が尊重され、かつ、公正で開かれたまちづくりを推進するものとする。

3 市民、議会及び行政は、地域の個性及び自立性を尊重した地域のまちづくりを推進するものとする。

(まちづくりの基本原則)

第5条 市民、議会及び行政は、次に掲げる事項を基本原則として、まちづくりを行うものとする。

(1) 情報共有の原則 まちづくりに関する情報を互いに共有すること。

(2) 市民参画の原則 市民参画の機会を保障し、市政運営を行うこと。

(3) 協働の原則 協働によりまちづくりの課題の解決に当たること。

第3章 市民、議会及び行政の責務と役割

(市民の権利)

第6条 市民は、市政に参画する権利を有する。

2 市民は、市政に関する情報を知る権利を有する。

3 市民は、行政サービスを受ける権利を有する。

(市民の責務及び役割)

第7条 市民は、まちづくりの主体であることを認識し、広い視野に立って、自らの発言と行動に責任を持たなければならない。

2 市民は、まちづくりの主体として、地域社会の活性化を図るとともに、まちづくりへ積極的に参画し、自らまちづくりに取り組まなければならない。

3 市民は、市が提供する行政サービスを受けるに当たって、応分の負担を負わなければならない。

(青少年及び子どもの育成)

第8条 市民、議会及び行政は、青少年及び子どもを人として尊び、社会の一員として、重んずるとともに、安心、安全で健やかに育つ環境づくりに取り組まなければならない。

2 青少年及び子どもは、それぞれの年齢にふさわしいまちづくりに参加する権利を有する。

(地域コミュニティ等の育成)

第9条 市民、議会及び行政は、互いに助け合い、地域の課題に自ら取り組むことを目的として、自主的に形成された集団(以下「地域コミュニティ」という。)、NPO法人等がまちづくりの担い手であることを認識し、これを守り育てるよう努めるものとする。

2 議会及び行政は、地域コミュニティ、NPO法人等の自主性及び自立性を尊重し、政策形成等を行うものとする。

3 行政は、地域コミュニティ、NPO法人等の活動を支援するため、必要な施策を講じなければならない。

(議会の責務及び役割)

第10条 議会は、法令で定めるところにより、市民の直接選挙により信託を受けた議員によって構成される市政の意思決定機関であり、市政運営の監視、政策立案及び市政への提言を行うものとする。

2 議会は、市民に開かれた議会運営を行い、地域の課題及び市民の意見を把握し、並びに総合的な視点に立って調査研究を行うとともに、市民の意見を市政に反映させるよう努めなければならない。

(市長の責務及び役割)

第11条 市長は、市民の代表者として、市民の信託に応え、毎年市政の基本方針を明らかにし、公正かつ誠実に市政運営に当たらなければならない。

(市職員の責務及び役割)

第12条 市職員は、市民全体の奉仕者として、公務を民主的かつ能率的に処理すべき責務を深く自覚し、法令、条例、規則等を遵守し、誠実かつ公正に職務を遂行しなければならない。

2 市職員は、職務の遂行に必要な知識、技能等の向上に努め、地域の課題に的確に対応しなければならない。

第4章 市政運営

(効率的な市政運営)

第13条 行政は、行政課題の早期解決及び市民サービスの維持・向上を図るため、限られた財源と人材を有効に活用し、市民満足度の高い、効率的で効果的な市政運営に努めなければならない。

(組織体制)

第14条 行政は、適正かつ能率的で、効果的な市政運営に対応するよう、柔軟で機動性のある組織体制を整備しなければならない。

(総合計画)

第15条 行政は、総合的かつ計画的な市政運営を図るために、議会の議決を経て総合計画を策定するものとする。

2 総合計画の策定に当たっては、市民参画の機会を確保し、広く市民の意見を反映させるよう努めなければならない。

(健全な財政運営)

第16条 行政は、将来にわたって財政の健全化を確保するため、中長期の財政計画を策定しなければならない。

2 行政は、予算及び決算その他市の財政状況について、市民に分かりやすく公表しなければならない。

(行政評価)

第17条 行政は、市政運営において、市民に対する説明責任を果たすとともに、市民本位の効率的で質の高い、行財政運営及び市民の視点に立った成果重視の行政への転換を一層推進するため、行政評価を実施しなければならない。

2 行政は、行政評価の結果を市民に分かりやすく公表するとともに、施策、事業等に反映しなければならない。

(行財政改革)

第18条 行政は、最小の経費で最大の市民サービスを図るため、行財政改革に取り組まなければならない。

2 行政は、行財政改革の目標及びそれを実現するための施策を定めた計画を策定しなければならない。

(個人情報の保護)

第19条 議会及び行政は、個人の権利と利益の保護を図るとともに、公正で信頼される市政の推進に資するため、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第1項に規定される本市が保有する個人情報を適正に管理しなければならない。

(行政手続)

第20条 行政は、市民の権利と利益の保護に資するため、対馬市行政手続条例(平成16年対馬市条例第15号)の定めるところにより処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通事項を明らかにし、市政運営における公正の確保と透明性の向上を図るものとする。

(危機管理)

第21条 行政は、常に災害等の緊急の事態に備え、市民の身体、生命及び財産の安全性が確保できるよう、危機管理体制を整備するとともに、その対応に当たっては、市民、関係団体等との連携・協力を図るものとする。

第5章 情報共有、参画及び協働

(情報の共有)

第22条 行政は、市民に対し、市政に関する情報を積極的に分かりやすく、適時に提供するとともに、市民との情報の共有に努めなければならない。

2 行政は、参画と協働による市政運営に資するため、市民と情報を共有するための仕組みの整備を図らなければならない。

(情報公開)

第23条 行政は、行政情報の公開を求める市民の権利を明らかにするとともに、市民に説明する責務の全うと、市民の市政への参加の促進を図るため、対馬市情報公開条例(平成16年対馬市条例第13号)の定めるところにより、市の保有する情報は原則として公開しなければならない。

(説明責任等)

第24条 行政は、政策等の実施に当たり市民に分かりやすく説明しなければならない。

2 行政は、市民の市政に関する意見、要望、苦情等に対し、速やかに事実関係を調査し、誠実に対応しなければならない。

(パブリックコメント)

第25条 行政は、市の基本的な政策等の策定に当たっては、事前に必要な情報を市民へ公表し、意見を求めるとともに、これを考慮して意思決定を行わなければならない。

2 前項の手続を行った場合は、速やかにその結果を市民に公表するものとする。

(審議会等の参加)

第26条 行政は、法令に基づき設置する附属機関及びこれに類する機関の委員を選任する場合は、その委員の一部には、市民からの公募による委員を選任するよう努めなければならない。

(市民参画)

第27条 市民は、自らが地域の自治の担い手であるとの認識のもと、互いに助け合い、積極的に地域のまちづくりに取り組むものとする。

2 議会及び行政は、市民が市政及びまちづくりに参画しやすい環境を整備しなければならない。

(協働)

第28条 市民、議会及び行政は、互いに対等の関係で目的と情報を共有し、相互理解と連携協力のもと、まちづくりに取り組まなければならない。

2 行政は、協働を推進するための仕組みを整備するとともに、協働の推進に当たっては、市民の自主的な活動を支援するものとする。

(男女共同参画)

第29条 市民、議会及び行政は、男女が社会の平等な構成員として互いの人権を尊重しつつ、共にまちづくりに参画できるよう努めなければならない。

第6章 住民投票

(住民投票)

第30条 本市において市議会議員及び市長の選挙権を有する住民(以下「住民」という。)、議会議員及び市長は、市政に関する重要事項について、住民の意思を直接確認するために、住民投票の実施を請求又は発議することができる。

2 市長は、前項の住民投票の請求又は発議があったときは、投票の目的、投票者の資格その他住民投票の実施に必要な事項を、それぞれの事案に応じて別に条例で定めることにより、住民投票を実施することができる。

3 住民、議会及び市長は、住民投票の結果を尊重しなければならない。

第7章 対馬らしさの追求

(対馬らしさの追求)

第31条 市民、議会及び行政は、対馬の地理的、歴史的な特色を生かしたまちづくりを推進していくことに努めるものとする。

第8章 条例の検証及び見直し

(条例の検証)

第32条 市長は、この条例の趣旨に照らして、各項目の状況を把握し、検証を行うため、対馬市市民基本条例推進審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。

(条例の見直し)

第33条 市長は、この条例の施行の日から4年を超えない期間ごとに、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて見直しを行うなどの必要な措置を講ずるものとする。

この条例は、平成24年4月1日から施行する。

(令和5年3月20日条例第13号)

(施行期日)

第1条 この条例は、令和5年4月1日から施行する。

対馬市市民基本条例

平成23年12月22日 条例第38号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
第3編 執行機関/第1章 長/第7節 地域振興
沿革情報
平成23年12月22日 条例第38号
令和5年3月20日 条例第13号