○対馬市環境基本条例

平成23年12月22日

条例第40号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

第1節 施策の策定等に係る指針(第9条)

第2節 環境基本計画(第10条)

第3節 環境の保全及び創造のための施策等(第11条―第23条)

第4節 環境の保全及び創造に関する協力(第24条・第25条)

第5節 施策推進体制の整備(第26条)

第3章 環境審議会(第27条・第28条)

第4章 雑則(第29条)

附則

私たちの島、対馬は、アジア大陸と九州本土との間に位置し、古くは、魏志倭人伝ぎしわじんでんに「土地は山険しく、深林しんりん多く、道路は禽鹿きんろくけいの如し。良田無く、海物を食して自活し船に乗りて南北に市糴してきす。」と記述されているとおり、島の厳しい地勢の影響を受けながらも、大陸との交易を図り、独自の歴史や文化と共にツシマヤマネコをはじめとする野生動植物をも現代に引き継いできた世界に誇れる島である。

しかし、近年の高度経済成長は生活様式の多様化や消費型社会を招くこととなり、森林は荒廃し、地球規模での環境破壊や資源の枯渇を引き起こしており、豊かな自然環境の象徴であるツシマヤマネコをはじめとする野生動植物の減少や絶滅は生態系の悪化を物語っている。

今日、島の原風景や地域の気候や土壌によって形づくられてきた風土が残されてきたことは、先人によるたゆまぬ努力があったからと認識し、私たちは今まで以上に森・川・里・海が連環し環境に配慮した持続可能な社会経済活動を推進するとともに、人とツシマヤマネコをはじめとする野生動植物が共生できる島づくりを目指し、市民の総力を挙げ、この恵まれた自然環境を壊すことなく良好な状態で次世代に引き継ぐことを決意しここに対馬市環境基本条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、人とツシマヤマネコをはじめとする野生動植物との共生を目指し、環境の保全及び創造に関する基本理念並びに施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 環境の保全及び創造 健全で恵み豊かな環境を取り戻し、保護及び整備することで、将来にわたって良好な状態を創り維持することをいう。

(2) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

(3) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに、市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

(4) 生物の多様性 様々な生態系及び様々な種類の生物が存在すること並びに一種類の生物の中に様々な個性を持った生物が存在することをいう。

(5) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。

(環境の保全及び創造についての基本理念)

第3条 環境の保全及び創造は、次に掲げる基本理念に基づき行わなければならない。

(1) 環境への負荷が少ない循環型社会の構築に努め、現在及び将来の市民に良好な環境を継承していくこと。

(2) 豊かな自然環境と生物の多様性を保ちつつ、将来にわたり市民と自然とのふれあいを推進すること。

(3) 市、事業者及び市民が環境保全を自らの問題として認識し、それぞれの活動によって生じる環境への負荷を低減するための取り組みを積極的に行うこと。

(4) 市が国境に接し国際的に密接な相互依存関係の中で経済が営まれていること及び地球環境保全が人類共通の課題であることにかんがみ国際協力を積極的に推進すること。

(5) 前各号に掲げる理念を実現するため、市、事業者及び市民がそれぞれの役割を自覚し、公平な役割分担の下に、相互に協力かつ連携して取り組むこと。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める環境の保全及び創造についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり環境の保全及び創造を図るため次に掲げる責務を有する。

(1) 環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施すること。

(2) 前号の施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境への負荷の低減に積極的に努めなければならない。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、基本理念にのっとり次に掲げる責務を有する。

(1) 事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる廃棄物を適正に処理するとともに、公害を防止し、又は生物の多様性を適切に保全するために必要な措置を講ずること。

(2) 事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。

(3) 事業活動に関し、環境の保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力すること。

(市民の責務)

第6条 市民は、基本理念にのっとり次に掲げる責務を有する。

(1) 環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

(2) 環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する施策に協力又は参加すること。

(滞在者等の責務)

第7条 観光旅行等で本市に滞在する者は、前条に定める市民の責務に準じて環境の保全及び創造に努めるものとする。

(年次報告)

第8条 市長は、環境の状況、環境の保全及び創造に関する施策の実施状況等について、年次報告書を作成し、これを公表しなければならない。

第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

第1節 施策の策定等に係る指針

(施策等の指針)

第9条 市は、環境の保全及び創造に関する施策の策定と実施に当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行わなければならない。

(1) 人といきものが共生するために必要な大気、水、土壌、海洋等自然的構成要素を将来にわたって良好な状態に保持すること。

(2) 子どもたちに、人と自然が豊かに触れ合うことの楽しさを教え、将来にわたり環境を守っていくことの大切さを伝えること。

(3) 野生動植物の種の保存その他の生物の多様性の確保を図ること。

(4) 異常繁殖しているシカ、イノシシ等の獣害対策を推進し、生物の多様性の確保及び生態系の均衡を図ること。

(5) 自然と調和した潤いと安らぎのある良好な景観を形成するとともに、地域における歴史的又は文化的資源を活かした施策を推進すること。

(6) 市民、事業者及び市が連携して廃棄物の発生を抑え、また、資源として有効に活用し、循環型のまちづくりを推進すること。

(7) 環境の保全及び創造に関する活動と経済活動との共鳴を図ることにより、環境の保全及び創造に関する活動を持続的に推進すること。

(8) 前各号に掲げる事項その他環境の保全及び創造のために必要な事項を推進することにより、地球環境保全を積極的に推進すること。

第2節 環境基本計画

(環境基本計画)

第10条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全及び創造に関する目標並びに総合的な施策の方針

(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、市民、事業者及び民間団体等(以下「市民等」という。)の意見を反映するよう努めるとともに、あらかじめ対馬市環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 市長は、環境基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。

5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

第3節 環境の保全及び創造のための施策等

(施策の策定等に当たっての配慮)

第11条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合を図ることにより環境への負荷が低減されるように配慮しなければならない。

(環境への事前配慮)

第12条 市は、環境に影響を及ぼすおそれのある事業を行おうとする事業者があらかじめその事業に係る環境の保全について適正に配慮するよう事業者に対して必要な措置を講ずることができる。

2 市民等は、法令等に違反しない場合においても、環境に影響を及ぼすおそれのある施設の設置その他の行為をするときは、環境への負荷が少ない方法で行うよう努めなければならない。

(環境の保全上の支障を防止するための規則)

第13条 市は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる行為について必要な規制の措置を講じなければならない。

(1) 公害の原因となる行為

(2) 生物の多様性の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為

(3) 前2号に掲げるもののほか、人の健康又は生活環境に支障を及ぼすおそれがある行為

(生物の多様性の保全等)

第14条 市は、ツシマヤマネコをはじめとする野生動植物の生息環境等に配慮し、森林、農地、河川等における絶滅危惧種等多様な野生動植物の生存を確保するため、生物の多様性の保全に必要な措置を講ずるものとする。

(快適な環境の保全等)

第15条 市は、公園、緑地及び水辺地の整備、良好な景観の確保、歴史的又は文化的資源の保全等を図ることにより、潤いと安らぎのある快適な環境を確保するため、必要な措置を講ずるものとする。

(環境の保全上の支障を防止するための経済的措置)

第16条 市は、事業者又は市民が自ら環境への負荷を低減するための施設の整備その他の環境の保全及び創造に資する措置をとることを助長するために必要があるときは、助成その他必要な措置を講ずるように努めるものとする。

2 市は、適正かつ公平な経済的負担を求めることにより市民等が自ら環境への負荷の低減に努めることとなるように誘導するため、必要な措置を講ずることができるものとする。

3 前項の措置を講ずる必要がある場合には、その措置に係る施策を活用して環境の保全上の支障を防止することについて市民等の理解と協力を得るように努めるものとする。

(環境の保全及び創造に資する公共的施設の整備)

第17条 市は、生活排水又は廃棄物の処理施設その他の環境の保全及び創造に資する公共的施設の整備を推進するとともに、これらの施設の適切な利用の促進に努めるものとする。

2 市は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 市は、前2項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他これらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。

(資源の循環的利用等の推進)

第18条 市は、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用が促進されるように、必要な措置を講じなければならない。

2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設及び維持管理その他の事務事業の実施に当たって、廃棄物の減量、資源の循環的な利用及びエネルギーの合理的かつ効率的な利用に努めるものとする。

3 市は、環境への負荷の低減を図るため、市民等による廃棄物の減量、資源の循環的な利用及びエネルギーの合理的かつ効率的な利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(環境教育の充実及び環境学習の促進)

第19条 市は、市民等が環境の保全及び創造について理解を深め、教育及び学習が推進されるように環境の保全及び創造に関する必要な情報の提供その他の必要な措置を講じなければならない。

(市民等の自発的活動の促進)

第20条 市は、市民等が自発的に行う緑化活動、環境美化活動、再生資源の回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が促進されるように、必要な措置を講じなければならない。

(環境状況の把握等)

第21条 市は、環境の状況を把握し、環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な情報の収集、調査及び研究の実施に努めるものとする。

2 市は、環境の状況を把握し、環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定、検査等の体制の整備に努めるものとする。

(情報の提供)

第22条 市は、環境の保全及び創造に関する教育の充実と学習の促進並びに市民等が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動の促進のため、環境の状況その他の必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。

(地球環境保全の推進)

第23条 市は、地球環境保全のため、地球の温暖化の防止、オゾン層の保護、酸性雨対策その他の施策を積極的に推進するものとする。

2 市は、国、他の地方公共団体及びその他の関係団体等(以下「国等」という。)と連携し、地球環境保全に関する調査、情報の提供等に努めるものとする。

第4節 環境の保全及び創造に関する協力

(国等との協力)

第24条 市は、環境の保全及び創造を図るための広域的な取り組みを必要とする施策の実施に当たっては、国等と協力して、その推進に努めるものとする。

(国際協力)

第25条 市は、国等と連携し、又は市の実施する各種の国際交流を通じて、環境の保全及び創造に関する情報の提供、技術の活用等により、環境の保全及び創造に関する国際協力の推進に努めるものとする。

第5節 施策推進体制の整備

(推進体制の整備)

第26条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、市の機関相互の緊密な連携及び施策の調整を図るための体制を整備するものとする。

2 市は、市民等との協働により、環境の保全及び創造に関する施策を積極的に推進するための体制を整備するように努めるものとする。

第3章 環境審議会

(設置)

第27条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、対馬市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

(所掌事項)

第28条 審議会の所掌事項は、次に掲げるとおりとする。

(1) 環境基本計画の策定及び変更に関すること。

(2) 環境の保全及び創造の基本的事項及び重要事項に関すること。

(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関し必要と認められる事項

2 審議会は、前項各号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関し市長に意見を述べることができる。

3 前2項に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、別に定める。

第4章 雑則

(委任)

第29条 この条例に定めるもののほか、必要事項は、別に定める。

この条例は、平成24年4月1日から施行する。

対馬市環境基本条例

平成23年12月22日 条例第40号

(平成24年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第4章 環境衛生
沿革情報
平成23年12月22日 条例第40号