○対馬市森林もりづくり条例

平成23年12月22日

条例第39号

目次

前文

第1章 総則(第1条・第2条)

第2章 森林づくりの基本理念(第3条)

第3章 市、森林組合等関係者及び市民の責務と役割(第4条―第8条)

第4章 森林整備及び環境保全に関する基本的施策(第9条―第14条)

第5章 森林づくり基本計画(第15条・第16条)

第6章 対馬市森林づくり委員会(第17条)

第7章 基金の設置(第18条)

第8章 遵守事項(第19条―第21条)

第9章 雑則(第22条)

附則

本市の約9割を占める森林は、私たちの生活に多様な恵みをもたらしている。海の環境や資源も森林の栄養分が川・里を通して海に注ぐことによって維持されており、対馬の基幹産業である水産業と林業は森林の恵みを受けて成り立っている。

また、森林は、水源かん養、土砂流出や山地災害の防止、自然環境の保全、癒しや安らぎの空間形成、世界的な課題である地球温暖化防止機能等、市民生活の安全や安心という面からも、大きな役割を担っている。

更に、本市の森林は、対馬の象徴でもあるツシマヤマネコ等、大陸と日本のつながりを示す多様な動植物の生息空間として貴重であり、他地域に類を見ない照葉樹林や落葉広葉樹林等の豊かな植生から成り立っている。それらの生息環境を保全し生物多様性を維持することは、対馬市民の責務であり、島の宝を守ることでもある。

しかし、現状の森林に目を向けると、長引く木材価格の低迷や後継者不足等によって林業としての生業が難しくなり、手入れ不足の森林や放置されたままの森林が目立っている。一部では大面積で無秩序な伐採がみられ、土砂流出や河川環境の悪化が危惧されている。更に、森林へのポイ捨てやゴミの不法投棄も後を絶たない。こうした事態は、上記のような森林に期待されている多様な役割を十分に果たせないことを意味している。

「環境王国、対馬」にとって、森林を再生し、森・川・里・海の連環を踏まえて環境改善に努めることは喫緊の課題である。また、この課題は、林業者や森林の所有者だけに委ねられるものではなく、対馬市民がそれぞれの立場で積極的に協力、参加することが求められる課題でもある。

同時に森林を再生するためには、適切な資源の利用が不可欠であり、対馬材の活用促進や対馬しいたけ等、林産物の生産向上をはじめ、木質チップボイラー等、再生可能エネルギーや森林の二酸化炭素吸収機能を活用した新分野の利用、開拓等も急務である。

以上、森林が環境保全・環境再生の礎となり、豊かな森林資源を生業として活用し、同時に自然豊かな森林を対馬市の大きな財産として次世代に引き継ぐことを目的として、対馬市森林づくり条例を制定するものである。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、森林の有する多面的な機能と可能性を再認識し、森林を育て、森林に親しみ、森林の恵みをいただくという循環の中で、森林の保全及び資源の有効活用のための基本的な考え方を共有するため、市、森林組合、森林事業者、森林所有者、市民等の役割及び責任を明らかにすることで本市の豊かな森林を守り、もって貴重な財産として後世に継承することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 森林 市内に存する森林法(昭和26年法律第249号)第2条第1項に規定する森林(竹林を含む。)をいう。

(2) 多面的機能 土砂流出、山地崩壊の防止、洪水軽減等の水源のかん養、自然環境の保全、地球温暖化の抑止、保健休養、木材その他の林産物の生産及び供給その他森林の有する多様な機能をいう。

(3) 森林づくり 森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるため、森林を守り育てるとともに活用することをいう。

(4) 人工林 植栽、種まき又はさし木により成立した森林(伐採跡地を含む。)をいう。

(5) 天然林 人工林以外の森林をいう。

(6) 森林組合 市内に所在する森林組合法(昭和53年法律第36号)に規定する組合をいう。

(7) 森林事業者 市内において森林の施業若しくは木材その他の林産物の生産及び加工又は流通の事業を行う者(森林組合を除く。)をいう。

(8) 森林所有者 森林の土地を所有し、又は森林の土地にある木竹を所有し、若しくは育成することができる者をいう。

(9) 市民 市内に住み、若しくは勤める者又は市内に事務所を有する法人若しくは市内で活動する団体等をいう。

(10) 公共的団体 農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、商工会等の産業経済団体、青年団、婦人会等の文化教育事業団体等、公共的な活動を営む団体をいう。

第2章 森林づくりの基本理念

(森林づくりの基本理念)

第3条 市、森林組合、森林事業者、森林所有者、市民等は、この条例の目的を達成するため、適切な責務と役割分担のもとに相互の連携及び協力により、次に掲げる基本理念に基づいて森林づくりを行うものとする。

(1) 森林の有する多面的機能が持続的に発揮できるよう、人工林及び天然林の適正配置をはじめ森林の利用目的に応じたゾーニングを施し、長期的な展望に立った計画的な森林づくりを行うこと。

(2) 林業が経済的に自立した産業となるよう、自然エネルギー資源としての活用及び木造住宅の推進並びに森林の二酸化炭素吸収機能を活用した新規産業化の推進等、多様な振興を図り、木材資源の循環利用を推進すること。

(3) 森林は、島の環境改善及び再生の礎との認識を共有し、河川環境、里環境、海環境等、島全体の環境改善のため全島での一体的な取り組みを連携して推進すること。

(4) 森林を地域の活性化につながる素材と認識し、地域と一体となった森林づくりを推進すること。

(5) 前各号に掲げる基本理念が継続して行われるよう、森林づくりを担う人材の育成を図ること。

第3章 市、森林組合等関係者及び市民の責務と役割

(市の責務及び役割)

第4条 市は、この条例の目的を達成するため、森林づくりの主体となって総合的かつ計画的な施策の推進に努めなければならない。

2 市は、国及び県との連携を図るとともに、他の地方公共団体、公共的団体、関係団体等に対し、必要に応じて理解と協力を求め、森林づくりによる森林資源の有効活用及び環境改善の推進に努めなければならない。

3 市は、森林づくりに関する情報の提供を通じて、市内外の人々がこの条例の基本理念について、理解が得られるよう努めなければならない。

4 市は、木材の地産地消を推進し、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年法律第36号)の趣旨に即して、公共建築物等の木造化に努めなければならない。

5 市は、再生可能エネルギーの活用や二酸化炭素の排出権取引に関する新たな分野において、森林資源の活用を図れるよう努めなければならない。

6 市は、市内森林の森林所有者等から売却又は譲渡の届出があった場合、事案詳細を確認し、指導、助言等の必要な措置を講じなければならない。

7 市は、環境に配慮した森林整備をはじめ、有害鳥獣対策、多様な生態系の保護等、本条例の目的を達成するため、必要な措置を講じなければならない。

(森林組合の責務及び役割)

第5条 森林組合は、森林管理の中核的な担い手として、市、県、関係機関等との連携を密にし、木材その他林産物の生産及び供給を通じて、環境に配慮した森林づくりに積極的に取り組まなければならない。

2 森林組合は、環境に配慮した森林の管理が適正に行われるよう当該組合員に働きかけるとともに、計画的に森林づくりに取り組まなければならない。

3 森林組合は、市、県、関係機関等が行う森林づくりに関する各種施策に対し、協力するよう努めなければならない。

(森林事業者の責務及び役割)

第6条 森林事業者は、環境に配慮した森林づくりに関する各種施策に協力するとともに、事業活動を行うに当たっては、別に定める伐採ガイドラインにのっとり、生態系の保全等、森林の多面的機能の確保に配慮するものとする。

2 森林事業者は、事業活動を行うに当たっては、ゲンカイツツジやヤマザクラ等、人々に癒しをもたらす樹木、ケヤキやカヤ等の貴重な有用樹木の保全に配慮するものとする。

3 森林事業者は、市、県、関係機関等が行う森林づくりに関する各種施策に対し、協力するよう努めるものとする。

(森林所有者の責務及び役割)

第7条 森林所有者は、森林づくりの重要性を深く認識し、自らが所有又は育成する森林について、森林の有する多面的機能が十分に発揮されるよう努めるものとする。

2 森林所有者は、前条第2項に定める樹木の保全に努め、かつ、自然景観を損なわないよう配慮するものとする。

3 森林所有者は、所有又は育成する森林の境界及び木竹の状況を把握し、その適正な整備並びに保全の推進に極力、努めるものとする。

4 森林所有者は、森林を売却又は譲渡する場合は、事前に市長に届けるものとする。

5 森林所有者は、市、県、関係機関等が行う森林づくりに関する各種施策に対し、協力するよう努めるものとする。

(市民の責務及び役割)

第8条 市民は、森林が対馬の貴重な財産であることを認識し、本条例に定める基本理念にのっとり、市、県、関係機関等が行う森林づくりに関する各種施策に対し、協力又は参加するよう努めるものとする。

2 市民は、市内で生産される木材その他の林産物を積極的に活用するよう努めるものとする。

第4章 森林整備及び環境保全に関する基本的施策

(森林の整備及び保全の推進)

第9条 市は、森林の適正な整備及び多様な生態系の保全を推進するため、国、県、関係機関等と連携し、造林、保育その他の森林の施業を計画的かつ適切に実施するものとする。

2 市は、前項に規定する森林の適正な整備及び多様な生態系の保全を効率的に行うため、森林所有者、森林関係事業者等に対し、森林の施業を一体的に実施するよう要請するものとする。

3 市、関係機関等は、今後の適正な森林整備のため、環境に配慮した林内路網の整備及び拡充を連携して図るものとする。

(林業及び木材産業の健全な発展)

第10条 市は、林業及び木材産業の健全な発展並びに林業の新たな産業化を図るため次の各号に掲げる施策を実施する。

(1) 木質バイオマス燃料の利用促進のための施策の展開

(2) 島の自然及び風土を利用した原木しいたけ栽培の再生と振興

(3) 森林の二酸化炭素吸収機能及び化石エネルギー代替機能を活用した新規産業化の推進

(4) 林業従事者等、森林整備担い手の育成

(5) 公共建築物における地場産木材の利用促進

(6) 対馬流域森林整備推進協定に基づく共同出荷体制の整備による木材流通効率化の推進

(7) 韓国、中国等海外への流通ルートの新規開拓

(8) 有害鳥獣を有効活用した新規産業化の推進

(9) その他林業振興のために必要な各種施策の展開

(多様な生態系に配慮した森林の保全)

第11条 市は、ツシマヤマネコをはじめとする大陸と日本とのつながりを示す多様な生態系を後世に引き継ぐため、環境に配慮した森林整備を推進するとともに、関係機関等と広く連携を図るものとする。

2 市は、ゲンカイツツジやヤマザクラ等、人々に癒しをもたらす植物の生息域の面的な保全を推進するとともに、関係機関等と広く連携を図るものとする。

3 市は、森林の現状に即し、森・川・里・海の連環した環境を保全するため、河川環境に特別に配慮した森林整備及び保全を進めていくものとする。

4 市は、公共機関が行うインフラ整備に対し、多様な生態系に配慮した森林の保全を図るため、必要に応じ協議の場を設けることができる。

5 市は、多様な生態系に配慮した森林の保全を図るための指針として対馬市伐採ガイドラインを別に定めるものとする。

(有害鳥獣対策)

第12条 市は、森林への有害鳥獣被害を抑制するため、必要な措置を講じるよう努めなければならない。

(市民参加の森林づくり活動の推進)

第13条 市は、森林づくりに対する市民の理解を一層深めるため、必要な情報提供を行うとともに、次世代を担う青少年等に対し、教育機関等と連携しながら自然体験活動や森林学習の機会を定期的に提供し、森林を大切にする心の醸成に努めるものとする。

(市民等への支援)

第14条 市は、市民、森林事業者、森林づくり活動団体等が行う森林づくりに対し、必要な支援を行うよう努めるものとする。

第5章 森林づくり基本計画

(森林づくり基本計画)

第15条 市長は、この条例の目的を具体的に推進するため、森林整備及び保全に関する取組方針並びに取組事業、実施期間、目標等を網羅した概ね10年間の森林づくりに関する基本的な計画(以下「森林づくり基本計画」という。)を定めるものとする。

2 森林づくり基本計画は、概ね5年ごとに見直すものとするが、市長が特に必要と認める場合は、その都度、見直すことができる。

3 市長は、森林づくり基本計画の策定及び見直しに当たっては、対馬市森林づくり委員会の意見聴取をはじめ、広く意見を反映できるよう必要な措置を講じなければならない。

4 市長は、森林づくり基本計画の策定及び見直しをしたときは、これを公表しなければならない。

(実施施策の公表)

第16条 市長は、森林の状況及び森林づくり基本計画に基づき実施された施策の進捗状況等について、これを公表しなければならない。

第6章 対馬市森林づくり委員会

(対馬市森林づくり委員会)

第17条 この条例の基本理念に基づき、対馬ならではの各種森林施策を推進するため、対馬市森林づくり委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、次に掲げる事項について協議、調査、提言及び評価を行う。

(1) 森林づくり基本計画に関すること。

(2) 森林づくりに関する基本的な事項に関すること。

(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認めること。

3 前2項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し、必要な事項は、別に定める。

第7章 基金の設置

(基金の設置)

第18条 市は、森林づくりに関する各種の施策等を推進し、連環する森・川・里・海が一体的に行う環境再生のための取り組みに資するため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第241条第1項の規定に基づき、対馬市森・川・里・海環境保全再生基金を設置する。

2 前項に定めるもののほか、必要な事項は、別に定める。

第8章 遵守事項

(立入調査)

第19条 市長は、この条例の目的に必要な調査のため、職員を森林に立ち入らせることができる。

2 前項の規定により立入調査を行う場合は、事前に森林所有者に立入年月日等を通知しなければならない。なお、職員は、身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

(関係法令の遵守等)

第20条 何人も、森林に立ち入る際には、関係法令を遵守するとともに地域の社会慣習を尊重し、森林環境の保全に努めなければならない。

(採取等の禁止)

第21条 森林法により定める者を除き、何人も、森林に立ち入り、みだりに動植物等を採取したり、ごみを捨てたりしてはならない。また、森林所有者の許可なく蜂洞等、個人の工作物を持込んではならない。

第9章 雑則

(委任)

第22条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、別に定める。

この条例は、平成24年4月1日から施行する。

対馬市森林づくり条例

平成23年12月22日 条例第39号

(平成24年4月1日施行)

体系情報
第9編 産業経済/第2章 農林・畜産/第3節
沿革情報
平成23年12月22日 条例第39号