対馬の海を知る番組(2014年度制作)

更新日:2021年04月01日

第3回 知ってる?対馬の海のピンチの原因と海洋保護区

対馬の海の生態系を守り、海の幸を未来に残すための取り組みが始まっています。

イカ太郎:
こんにちは僕、イカ太郎です!
こちらは対馬の海のことなら何でも知ってるイカはかせ!

はかせ:
ふぉふぉふぉ!

イカ太郎:
はかせ、前回までで対馬の海ってとっても素晴らしいけど、今、魚の量が減ったり、漁業をする人が減ってピンチと言うことがわかったよ。
それはどうしてなの?

はかせ:
一つの原因に、魚を取り過ぎているかもしれないと考えられておるのじゃ。
まずはお魚の増え方について話していこう。
お魚は一回の産卵でどれくらいの卵を産むと思うか?
実はな、サバ140万個。アナゴ1000万個。

イカ太郎:
そんなにたくさんの卵を産むなら、いっぱい獲っても大丈夫じゃないの?

説明:
「お魚の増え方」のグラフ。親になる魚がたくさんの卵を産み、成長する中で他の魚に食べられたりして数が減っていく。そして次の親になる魚が卵を産む。

はかせ:
そう言うわけにはいかんのじゃ。
海の中は弱肉強食。他の魚に食べられたりして、大人になれるのは限られておる。
増えた分だけ獲って次に親になる魚を残せば、生き残った魚はやがて卵を産める年齢になり、産卵し子どもを増やしていく。
これを繰り返していけば、魚の数は減らないと考えられておるのじゃ。
でも将来、親になって卵を産む魚を小さいうちに獲り過ぎてしまうと。

説明:
成長途中の魚を漁で獲ることによって、次に親になる魚の数が少なくなり、さらに産まれる卵の数も少なくなっていく。

イカ太郎:
大きくなって卵を産んでくれるお魚がいなくなっちゃう。

はかせ:
そうじゃ、魚は減り続ける一方なのじゃ。
実際に親になる魚を残す取り組みをしてお魚が増えて、水産大国になった国があるのじゃ。

イカ太郎:
行ってみたいなぁ。

はかせ:
じゃが、遠いぞ~。
ノルウェーという国じゃ。

イカ太郎:
ひとっ飛びだよ~!

説明:
イカ太郎、ノルウェーに行き、ノルウェーのサバに会う。

サバ:
ハ~イ、私はノルウェーのサバです。

イカ太郎:
ノルウェーってお魚増えてるんですか?

サバ:
ハイ、海の中を泳いで移動する魚も、海の底で生活する魚も、ノルウェーを含むヨーロッパ全体で増えてます。

イカ太郎:
どうやって増やしたんですか?

サバ:
ノルウェーでは船1隻で、獲っても良い魚の量が決まってるんです。
どうせ同じ量を獲るなら、小さい安い魚を獲るよりも大きくてりっぱで高く売れる魚を取った方が儲かるでしょう。
小さい魚を獲らずに3年待てば、同じ量を獲っても倍以上も儲かるんだよ。
じゃあ実際に獲ったお魚の年齢を、日本とヨーロッパで比べてみよう。

説明:
「日本とヨーロッパ、獲ったサバの年齢は?」のグラフを表示。日本は0歳の小さな魚を多く獲っているのに比べ、ノルウェーでは6歳以上の魚が多く獲られている。
「日本とヨーロッパ、海の中の親サバの割合は?」のグラフを表示。日本ではサバの中の親の割合が少ないのに対し、ノルウェーでは割合のほとんどを親が占めている。

サバ:
日本は0歳の小さな魚ばかり獲ってるよ。でもヨーロッパでは3歳以上の大きな魚をたくさん獲ってるよ。
この結果、日本は次の卵を産む親になる魚を残さずに、小さいうちに獲っちゃうからお魚は減る一方。
ヨーロッパは親になる魚を残しているから、毎年たくさんの子どもが産まれるんだよ。

イカ太郎:
高く売れるしお魚もいなくならないなんて、ヨーロッパってすごいね。

サバ:
そのおかげで今では世界中においしいサバを送ってるよ。
日本にも届いているでしょ。

イカ太郎:
ノルウェーのサバさん、日本でも会おうね。

サバ:
サヨナラ~。

説明:
イカ太郎、ノルウェーから対馬へ戻ってくる。

イカ太郎:
ちゃんと親になる魚を残して獲ると、お魚は増えるってことがわかったよ、はかせ。

はかせ:
そうじゃ、だがのぉ、獲る魚の量だけを気にしていたんじゃダメなんじゃぞ。
お魚が卵を産める場所や、子どもが育つ環境を大事に守って行くことも、重要なんじゃ。
例えば海藻が生い茂る海の森の事を「藻場」と呼んでいるんじゃ。

イカ太郎:
ほんとだ、海の中に森があるみたい

はかせ:
藻場は魚の産卵場所になったり、子どものお魚が隠れる場所になったり、非常に大事な役割があるんじゃ。
ところがな、最近海藻が生えない、裸の磯が広がってきておるのじゃ。

イカ太郎:
ええ~!

はかせ:
お魚は親になれずに死んでしまう子どもがすごく多いんじゃ。
弱いからこそ卵や子どもが育つ環境を守ってやることが大切なんじゃ。

イカ太郎:
どうやってお魚にとって大切な場所を守っていけばいいのかな?

はかせ:
京都のズワイガニさんがよく知っておるぞ。

イカ太郎:
僕、京都に行って来るよ。

説明:
イカ太郎、京都へ行き、京都のズワイガニに会う。

ズワイガニ:
おこしやす~。私は京都のズワイガニよ。
底引き網っていう、網を海底で引く方法で獲れるのよ。

イカ太郎:
京都ってお魚が住む場所を守ってるんですよね?

ズワイガニ:
そうなの。実は30年くらい前、私たちズワイガニはたくさん獲られ過ぎたり、他の魚と間違って獲られたりして、一番獲れていた時から10分の1に減ってしまったの。

イカ太郎:
ええ~!

ズワイガニ:
そこで京都ではカニにとって大切な場所を守る「保護区」が作られたの。
子どもを産む場所、カニの子供が育つ場所を守ることに決めたの。

イカ太郎:
どうやって守るの?

ズワイガニ:
保護区って決めたところに、こんなコンクリートブロックを置いて底引き網が出来ないようにしたの。
これまで色々な取り組みをしていっても増えなかったカニが、この保護区と同時にカニを守るために、ほかの魚を獲っている人たちにも働きかける活動をしたら、カニが徐々に増えて来たの。

説明:
3.25メートル程の正立方体のコンクリートブロックの中にカニが住めるようにし、かつ、底引き網ではコンクリートブロックの中のカニを獲ることができないようにして保護区を作成した。
「京都府沖合でのズワイガニの漁獲量」のグラフを表示。1965年から1980年にかけて減少していたズワイガニの漁獲量が、保護区を作成してから徐々に増えている。

イカ太郎:
ズワイガニさん、良かったね。

ズワイガニ:
おおきに。

説明:
イカ太郎、京都から対馬へ戻ってくる。

はかせ:
実はな、対馬でも魚の量を元に戻すために頑張っているところもあるんじゃよ。

イカ太郎:
僕、聞いて来る。

説明:
イカ太郎、上対馬町漁協へ行く。

イカ太郎:
上対馬町漁協に来たよ。
どんな取り組みをしているんですか?

山原さん:
うちの場合、各地区で色々なアマダイもあり、タチウオもあり、色々な魚種、漁法がありますので、その漁業種類ごとに資源管理に取り組んでいます。

イカ太郎:
こちらでは、10種類以上の資源保護の取り組みをしているんだよ。
特にアマダイは守る場所を決めたんだ。
ここでは、小さいものを獲らないように、大きい針を使ったり、獲り過ぎないように獲っても良い日にちや時間を決めているんだって。
それから、他の県から来る漁師さんにも、アマダイを守るために協力してもらってるんだよ。
減っていくアマダイをどうにかしたい!と、漁師さんが声をあげて始まった取り組みなんだって。

長谷川さん:
後継者に資源を残していく。今の代で終わる訳ではないのですからそう言う事から考えていくと、資源は大事にせにゃならんという事ですよね。

説明:
イカ太郎、対馬のはかせの元へ戻って来る。

イカ太郎:
上対馬町漁協のみなさん、お魚をとっても大切にしてたよ。

はかせ:
実はな、対馬市でも人と魚が共存して行けるように出来ることは何か、考えて実践していく取り組みを進めておるのじゃ。それが海洋保護区じゃ。

イカ太郎:
何だか難しそうだよ。

はかせ:
では実際に、海洋保護区を進めている人に話を聞いてみよう。

対馬市海洋保護区科学委員会の清野さんにインタビュー

清野さん:
海洋保護区と言うのは、産卵に来る藻場だとか、稚魚が育つ干潟だとか、場所を保護する場所ですよ、と言う事で、人間がきちんと手を加えていい状態に守っておく、という考え方なんです。
対馬は漁業の歴史が長いので、色んな種類の保護区を地域ごとに決めて、そう言うルールがあるところです。
漁業に関する色んな危機的な問題があって、漁業自体が続くかどうかわからなくなってしまったので、今までみたいに「わかる人がわかれば良い」という時代から、もっと字にするとか図にするとか皆で情報を共有して、誰でも「あ、そうなのか」と納得できるような形に整理することが必要になっています。
昔からの知恵をきちんと整理して、ご先祖様が作ってきた海を守る世界を受け継いで、それを科学的な調査だとかあるいはもう少し広いグローバルな色んな情報とかも加えて、新しい時代の対馬らしい海洋保護区というものを作って行くことになると思います。

対馬市海洋保護区科学委員会の清野さんのインタビュー終了

イカ太郎:
豊かな海に囲まれてる対馬にとって、漁業は僕たちの暮らしを支える大事な仕事だって事がわかったよ。
海の生態系を守って、この豊かな海をずーっと先まで繋いで行くには漁師さんだけじゃなくて、海から恵みをいただいている皆が協力して話し合いを続けていかないといけないんだね。
はかせ、僕もちゃんと海のことを勉強して意見が言えるように頑張るよ。

はかせ:
皆さん、対馬の海がとっても豊かで、だけど、とってもピンチってこと、少しでもお伝え出来たかの?
皆で力を合わせてこの豊かな対馬の海を守って行くのじゃ~!

第2回 知ってる?対馬の海のピンチ

水揚げが減っている?マグロは絶滅危惧種?「磯焼け」って何?対馬の海がピンチを迎えています。

 

ナレーター:
対馬の海はたくさんの魚たちの通り道。産卵の場所にもなっています。
対馬の海は私たちの生活だけではなく、日本の海を支えているのです。そんな対馬の海が今、危機を迎えています。
ずっとずっと先の未来まで、豊かな対馬の海の幸と共に暮らして行くために、今、対馬市では海洋保護区政策を進めています。
この番組は対馬の海について知り、私たちに出来る事は何か皆さんと一緒に考えて行く番組です。

番組タイトル:
守ろう!すばらしい対馬の海
第2回 知ってる?対馬の海のピンチ

イカ太郎:
こんにちは、僕イカ太郎です!
こちらは対馬の海の事なら何でも知ってる、イカはかせ!

はかせ:
ふぉふぉふぉ!こんにちは!

イカ太郎:
はかせ、前回は対馬の海ってとっても素晴らしいという事がわかったよ。
でもそんな対馬の海が今、ピンチを迎えているって言ってたよね?
どんな風にピンチなの?

はかせ:
実はな、対馬近海で獲れる魚の量がどんどん減っている、というデータがあるのじゃ。

イカ太郎:
ええ~!

はかせ:
30年前対馬で獲れていた魚の量は4万7千トン。最近ではおよそ1万5千トン。
なんと3分の1になってしまっとる。

イカ太郎:
そんなに減っちゃってるんだ。

はかせ:
例えば、対馬でたくさん獲れるイカも、一番獲れた時からおよそ5分の1に、アワビも6分の1に減っておるのじゃ。

イカ太郎:
ほんとに?
僕、お魚を獲っている人にお話聞いて来る!

はかせ:
うむ!

説明:
イカ太郎、上対馬町へ移動。

扇さんへインタビュー開始

イカ太郎:
上対馬町にやって来ました。
こちらでお話を聞くのは扇さん。「はえ縄」という長い縄についた、たくさんの針にエサをつけて、タイやブリやカサゴを獲っているんだって。
扇さんはどんな風に漁をしているんですか?

扇さん:
自分でイカを釣ってそれをエサにしてやってます。

イカ太郎:
扇さんは夕方出発して夜にイカを釣り、一度帰って来てまた夜の3時に出発。
タイなどを夜明けまで釣って帰ったら、お昼まで後片付け。
そしてまた夕方には出発するそうです。

扇さん:
家に船をとめている時間が3時間とか。あとはずっと船の上。

イカ太郎:
扇さん、お魚って昔より減ってるんですか?

扇さん:
減っているのは確かですね。
時期的にも1年間通して何かが獲れよった、相当獲れっよったんじゃないですかね。
イカとか、昔獲ったササイカとかも獲れなくなりましたね。よく獲れよったのが獲れなくなってしまった。

扇さんへのインタビュー終了

イカ太郎:
はかせ~!
やっぱり漁師さんも減ってるって言ってたよ。

説明:
「対馬の漁師さん116人に聞きました「対馬のお魚はふえている?それともへっている!?」」のグラフを表示。増えたと感じる人よりも減ったと感じる人の方が多い。

はかせ:
うむ、対馬の漁師さん116人にお魚は減っていると思うか、増えていると思うか聞いてみたのじゃ。
増えていると思う人はこれだけ、減っていると思う人はこれだけ。

イカ太郎:
やっぱり減ってると思ってる人の方が多いね。

はかせ:
うむ。特にマグロの子供であるヨコワという魚は減っていると感じている人が一番たくさんおるが、実は今、絶滅危惧種に指定されるほど減ってしまっているのじゃ。

イカ太郎:
へぇ~、大変。

はかせ:
さらにアワビやサザエなどの磯の生き物は増えていると思う人が一人もいなかった。

イカ太郎:
こんなにお魚が減っていたら、漁師さんもお魚が獲れなくて大変なんじゃないかな?
僕、お話、また聞いて来るよ。

はかせ:
しっかり聞いて来るのじゃぞ~。

説明:
イカ太郎、豊玉町へ移動。

松原さんへのインタビュー開始

イカ太郎:
豊玉町でイカ漁をしている松原さんにお話を聞くよ。
松原さんは40年間毎日欠かさず、漁や海の記録を書き続けている、とても研究熱心な漁師さんなんです。
松原さん、イカ釣り漁、今大変なことありますか?

松原さん:
油代(燃料代)が高くなった。
前は50円か30円だった安い時はね。100円超える時もある、ガソリンの値段と一緒だからね。
最低で一晩2万3千円か5千円、大きい船だと6万円くらいかかる。

イカ太郎:
イカ釣り漁って灯りを付けるから、燃料をたくさん使うんだよね。
かかるお金は増えるけど、獲れるお魚は減ってるなんて大変だ。

松原さん:
仮に4000万水揚げしてた人が、去年は2000万しか獲ってない。
それでは採算が合わないからアナゴ漁に切り替える。これは大きな切実な問題だもんね。
特に唐州地区には25~30隻の船がおったとよ。今は5~6隻しかおらん。
前は1週間おきに船の進水式ばっかりやったよ。
景気がいい時代もあった。
漁師は一獲千金で良い時があると言って、心に甘いところがあるとですよ。
今はそうはいかないけど。
船に資源が枯渇してもう出来なくなった。
本当に厳しいですよ、イカ釣りも。

松原さんへのインタビュー終了

イカ太郎:
漁業が出来なくなって船が減ってるんだって。

説明:
「漁船の燃料費の変化」のグラフを表示。燃料費は年々上がり続けている。

はかせ:
うむ。このグラフの通り。ここ10年、船の燃料の値段は上がり続けておる。
たくさんの燃料を使う漁業は続けるのが厳しくなって、辞めていく人がいるのが現実なのじゃ。

説明:
「産業人口の変化」のグラフを表示。全体的に産業人口は減少しているが、水産業の産業人口の減少が激しい。

はかせ:
その証拠に、これは対馬で仕事をしている人の人数のデータじゃが、他の仕事もここ30年間減り続けておるのじゃが、特に漁業をしている人の人数は減るスピードが速いのじゃ。
実はな、イカ太郎、お魚が減ってるだけじゃなくて、対馬の海の中の環境も昔と変わってしまっているのじゃ。

イカ太郎:
ええ~!

はかせ:
昔の海もよく知っている阿比留さんにお話を聞いて来るのじゃ~。

イカ太郎:
うん!

説明:
イカ太郎、豊玉町へ移動。

阿比留さんへのインタビュー開始

イカ太郎:
豊玉町に来たよ。阿比留さ~ん!
阿比留さんは集落の人と一緒に海に潜って、色々な物を獲っていたんだって。
昔の海ってどんなものが獲れていたんですか?

阿比留さん:
ノリ、ワカメ、アオサ、そのあとヒジキ。
4月、5月になったらヒジキ、それも一緒になって共同作業で。
お盆の時はヒジキで稼いだお金。
学校に行く時はノりで稼いだお金。子ども達はランドセルとか机とかね。
後はウニを獲ったり、最後はテングサを獲ってですね。
今はね海にもう全然何もないツルツルやもんね。海藻がなかったらやっぱり海藻に色々付くでしょ
小さいエビみたいなのとか魚の小っちゃいのとか、ずっとおったとですよ。
でもそんなのとかも全然ツルツルやけんね、住むところも隠れるところも食べ物も無いとでしょね。

イカ太郎:
ここは昔、海藻などの生き物が獲れきれないほどたくさんいた海。
今はもうかつての姿が無いことを、阿比留さんは寂しく思っています。

阿比留さん:
もう一回ですね、私の息のあるうちに、豊かな海を取り戻す。
どうにかして取り戻せないかな、と。いつも海を見たら思います。
皆で協力して頑張って、対馬を豊かに海と山と豊かな生活が出来て、皆さんが自然な生き方が出来るような、環境にして行きたいですね。

阿比留さんへのインタビュー終了

イカ太郎:
はかせ、どうすればいいのかな?
そもそも、どうして対馬の海は変わってしまったの?

はかせ:
それは様々な原因があると言われておる。
今、まさに対馬の海で研究がされているのじゃ。
次回は対馬の海のピンチの原因と、対馬市が進めている海洋保護区についてお伝えするので、見逃がさないでみるのじゃ~!

第1回 知ってる?対馬の海と魚の素晴らしさ

東シナ海と日本海を結ぶ場所にある対馬。そのまわりの海は栄養タップリのレストラン!たくさんの魚が集まります

ナレーター:
対馬の海はたくさんの魚たちの通り道。産卵の場所にもなっています。
対馬の海は、私たちの生活だけではなく、日本の海を支えているのです。そんな対馬の海が、今、危機を迎えています。これから先、もしかしたら魚がいなくなってしまうかもしれません。漁業ができなくなってしまうかもしれません。
ずっとずっと先の未来まで豊かな対馬の海の幸と共に暮らしていくために、今、対馬市では、海洋保護区政策を進めています。この番組は、対馬の海について知り、私たちにできることは何か皆さんと一緒に考えていく番組です。

番組タイトル:
守ろう!すばらしい対馬の海
第1回 知ってる?対馬の海と魚の素晴らしさ

イカ太郎:
「こんにちは!僕イカ太郎!対馬の海で生まれた元気なイカです!
みなさん、対馬の海ってと~ってもすごい海だってこと、知ってますか?第1回は、対馬の海ってどんなふうにすごいのか、見てみよう!
ということで、対馬の海にとっても詳しいはかせを呼ぶよ!はかせー!」

はかせ:
「ふぉっふぉっ!わしは、対馬の海で昔々生まれたイカじゃ!
こんなにスルメになったくらい長生きしとるから、対馬の海のことは、なんでもしっておるぞ!」

イカ太郎:
「ねえ、対馬の海のこと、早く教えてよ!」

はかせ:
「よし。まずは、対馬の海がどんなところにあるのか地図で見てみるのじゃ」

説明:
日本海の地図。日本海と東シナ海の間に対馬がある。

はかせ:
「対馬の海はここ。北には日本海、南には東シナ海があるのじゃ。対馬の海はお魚がこの2つの海を行き来する通り道になっておるのじゃ。
イカ太郎、この対馬の海がどんなふうに素晴らしいか知りたいじゃろ!」

イカ太郎:
「うん!」

対馬の海素晴らしさその1. 対馬の海と東シナ海は栄養たっぷりのレストラン

はかせ:
「対馬の海素晴らしさその1. 対馬の海と東シナ海は栄養たっぷりのレストラン、なのじゃ!
お魚のご飯のもとになるものを、植物プラントンというのじゃ。
対馬の海から東シナ海にかけての海はこの植物プランクトンが大好きな栄養や太陽の光をいっぱい食べることができる、まるでレストランのような海なのじゃ!」

イカ太郎:
「へえ~!僕、レストラン大好き!」

はかせ:
「ふぉふぉふぉ!ここらの海は、ほかの海と比べて浅い海なんじゃが、この浅さがとっても大事での?浅いところでは、海の中に「層」ができやすいんじゃ。」

説明:
日本海側は深く、東シナ海側は浅いことの説明。
浅い層は温かく、深い層は冷たい海水になる。

イカ太郎:
「層?層ができるといいことがあるの?」

はかせ:
「いい質問じゃのぉ。層ができると、植物プランクトンが増えたり、魚が産卵したりするのにとっても都合がよい環境ができるんじゃ。「層」ってのは、まぁ足場みたいなもんじゃ。層がなければ、植物プランクトンやら、魚の卵やら、まだ遊ぐ力がない小さなお魚は、海の底に沈んで行ってしまうんじゃが、層があると、そこに留まることができるんじゃ。」

イカ太郎:
「へぇ~。層がないと、床が抜けて真っ暗な地下室に落ちちゃうような感じかなぁ?」

その2.たくさんの魚の産卵の場所

はかせ:
「ふぉっふぉっふぉ。イカ太郎は天才じゃなぁ。それともうひとつ。中国大陸には、黄河や長江という大きな、大きな河があるじゃろ?この川が、陸地から豊富な栄養を運んできて、東シナ海に流し込んでくれるんじゃ。」

イカ太郎:
「栄養がたっぷりだから、植物プランクトンも増えてお魚もいっぱい集まってきそうだね!」

はかせ:
「その通りじゃ!実際に、スルメイカやマアジやマサバなど、多くの魚が、対馬の海や東シナ海で産卵しておるんじゃよ。」

その3.たくさんの魚が集まる良い漁場

イカ太郎:
「へぇ~。ひろーい東シナ海で生まれた沢山の魚も、対馬を通って、日本中のいろんなところに旅していくんだね!
でもちょうど対馬のあたりは海の幅が狭くなっているから、お魚の渋滞がおこりそうだね。」

はかせ:
「ふぉふぉ!それだけたくさんの魚が集まるよい漁場、ということなのじゃ!」

イカ太郎:
「ねぇ博士。こっちの日本海は、東シナ海とちがって、色が濃いよ。」

はかせ:
「良いところに気付いたのぉ。日本海は、深い海ってことじゃ。深いところには、浅いところとはまた違った生きものがおるんじゃ。」

イカ太郎:
「どんな魚?」

はかせ:
「そうじゃなぁ。アカムツとか、クエ、アマダイなんかは、深い海にすんでおる。目が大きくて赤っぽい魚は、だいたい深海性じゃ」

イカ太郎:
「へぇ。対馬でも採れる魚だね。」

はかせ:
「そうそう。対馬の北のほうに、ほら、細長くて深ーいところがあるじゃろ?ここは「対馬舟状海盆」っていうんだが、うん、まぁ、漁師さんたちは「ミミズ海溝」っと呼んでおるのじゃ。ここは深い海なので、日本海の深海性の魚を対馬周辺にもたらしてくれるのじゃ。」

その4.浅い海の魚も深い海の魚もいて種類が豊富

イカ太郎:
「東シナ海の浅い海で生まれた魚と、日本海の深い海で生まれた魚が、どっちも対馬にはいるんだ! 対馬の海って魚の種類も豊富なんだね!」

はかせ:
「ふぉふぉふぉ!対馬の海のすばらしさわかってきたじゃろ?もう一つ大切なポイントがあるぞ!実は、対馬の東の方では、植物プランクトンのピンチを救う、渦が巻くのじゃ~!」

その5.海を豊かにする対馬渦

イカ太郎:
「えええ~!渦?!」

はかせ:
「植物プランクトンは、光と栄養が大好き!だが、夏ごろになると、光が当たる場所の栄養はほとんどたべてしまって、ご飯がない状態に…」

説明:
海の浅い層にある栄養がなくなり、プランクトンがおなかをすかせている様子。

イカ太郎:
「海の底のに栄養があるんじゃないの?」

はかせ:
「そうなんじゃが…実は植物プランクトンは光がないと生きていけないから海の底では死んでしまう…!しかも自分で泳いでいく力もないのじゃ!」

イカ太郎:
「かわいそう…」

はかせ:

「そんな時、なんと!対馬の海には東シナ海から日本海に向けて「対馬暖流」という海流がながれておるのじゃが、それが対馬にぶつかることによって、夏ごろ渦が巻くのじゃ!これが、対馬渦!渦がまくと、海の中がごちゃまぜになって…」

イカ太郎:
「なんだか大変そう…」

はかせ:
「でも海の中が混ぜられることで、いいことがあるのじゃ!海がかき混ぜられると、植物プランクトンのいる光が当たるところに栄養を運んでくれるのじゃ!」

説明:
渦に乗って栄養が植物プランクトンのいる海の層に上がってくる様子。

イカ太郎:
「よかったね!これでおなかいっぱい栄養を食べられるね!」

はかせ:
「お魚のエサのもとになる、植物プランクトンが増えれば、魚たちもおなかいっぱい!大喜び!というわけじゃ。
このように、場所や地形などがうまい具合に関わり合って、対馬の海は他にはない素晴らしい豊かな海になっておるのじゃ!」

イカ太郎:
「僕の故郷の海が、そんなにすごいなんて、なんだかうれしいな~!」

はかせ:
「でもな、イカ太郎…実は、これから先、対馬の魚がずっと豊かな海のままという保証はないのじゃ…」

イカ太郎:
「え?」

はかせ:
「今、海で獲れる魚の量が減っているのじゃ。」

イカ太郎:
「ええ!?」

はかせ:
「対馬の海がピンチなのじゃ。
次回は、対馬の海の現状をお伝えするので、皆さんぜひ見るのじゃ!」

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