ツシマウラボシシジミについて
基本データ
【分布】
対馬の上島
(中国、台湾、インドなどに生息する種の日本固有亜種)
【生息地】
小川沿いの薄暗い林やその周辺
【形態】
羽の裏側は白地に黒い斑点があり、“ウラボシ”という名前の由来になっている。
表側はオスが青、メスが暗褐色をしている(ふちは黒色)
【指定状況】
絶滅危惧1A類(CR)(環境省第4次レッドリスト)
天然記念物(対馬市指定)
【食べ物】
幼虫→マメ科ヌスビトハギ属植物(地方名:ひっつき虫、どろぼうなど)の新葉、花、種子
成虫→ナワシロイチゴ、ハエドクソウなどの花の蜜
ツシマウラボシシジミの一生
幼虫は卵から孵った後、3回の脱皮を繰り返しサナギへと変態します。
サナギから羽化したチョウは多いもので100~150個もの卵を幼虫の餌植物に産みつけます。
同じ葉に複数頭幼虫がつくと共食いしてしまう場合があるため、
成虫が同じ場所に2つ以上卵を産みつけることは滅多にありません。
ツシマウラボシシジミの一年
ツシマウラボシシジミに迫る危機
(図)生息地の変遷
シカの食害によって短期間で生息環境が激変し、餌植物が減少したことが種に大きな影響を与えています。
1980年代ごろから急増したシカの被害に加え、環境の変化により
1990~2000年代に対馬の上島全域でみられていたツシマウラボシシジミは急激に数を減らし、最後はわずか1か所で数頭のチョウが見られるのみとなってしまいました。
現在、このチョウを捕まえることは法律で禁止されています。
保護活動
対馬市の対策
対馬市では希少種ツシマウラボシシジミ保全のため大きく3つの取り組みを行っています。
保護区の設置と環境整備
ツシマウラボシシジミの生息環境として好適と考えられる沢沿いで平坦な地形のスギ林を選び
保護区を設置し、餌植物がシカに食べられることのないよう
生息環境の一部を柵で囲い管理しています。
また、ほとんどの場所では餌となる植物が既にシカ食害により消えてしまっているため
積極的に植栽を行い、よりツシマウラボシシジミが生息しやすい環境を整備しています。
個体数調査
(写真)卵を産んでいるチョウ
設置した保護区内で何頭の卵、幼虫、サナギ、成虫が生息しているかを定期的に調べています。
天敵が多い自然界で卵から無事にチョウになれるのは数%だといわれています。
冬前にはリスク分散のため、保護区内より一部の越冬幼虫を保護し、翌年の春まで安全に過ごせる環境で飼育・管理することで、個体群の消滅を回避しています。
幼虫の食痕
同じ葉の裏側
(どこに幼虫がいるでしょう?答えは最下部)
食痕のある葉を見つけたら、裏返して幼虫を探します。
卵は新芽に、サナギは折りたたまれた葉の内側などで確認できます。
餌植物の育成と植栽
保護区に植栽したり、一時的に飼育が必要になった幼虫の餌にしたりするために
餌となる植物の栽培も行っています。
幼虫が食べるヌスビトハギ類の植物は日陰で育ちます。
春~初夏ごろ、市役所前では苗が並んでいる光景を見られます。
協力連携
保護活動団体・研究機関の取り組み
日本チョウ類保全協会、東京大学総合博物館、大阪府立大学による
飼育繁殖をはじめとする様々な保全に関する研究が行われています。
有効な保全策を実行するためには、科学的な根拠に基づき取り組むことが重要です。
対馬高校の取り組み
長崎県立対馬高校ユネスコスクール部では、2018年から餌植物の苗を育て
保護区に植栽するなど保護活動を行っています。
同校は“ユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校”である
ユネスコスクールに認定されており、ESD教育にも力を入れて取り組んでいます。
動物園等(東京都足立区生物園、箕面昆虫館、長崎バイオパーク)の取り組み
サナギの野生復帰
動物園で繁殖したツシマウラボシシジミの幼虫
絶滅危惧種の保全活動の一環として、ツシマウラボシシジミを動物園等の温室にて
飼育・繁殖させ、累代飼育に取り組んでいます。
ここで増やした個体の一部を対馬に送り、野生に帰すという取り組みを行っています。
このように本来の生息地とは異なる場所で行う保護・保全活動を“生息域外保全”といいます。
幼虫はどこでしょうクイズの正解
正解はこちら(小葉の根元あたり)でした。
野生環境でみると、色や形が植物に似ていてうまく擬態していることがわかります。
皆さんは見つけられましたか?
普及啓発活動
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対馬市厳原町国分1441番地
電話番号:0920-53-6111
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更新日:2023年12月06日