平成30年度 施政方針

更新日:2021年04月01日

はじめに

 平成30年度の一般会計予算及び特別会計予算のご審議をお願いするに当り、予算編成方針とその概要をご説明申し上げます。

 昨年を振り返りますと、国内で38年ぶりとなった「カワウソ発見」のニュースがございました。これにより、未だ豊かな自然が残された対馬を全国に広く発信するものとなり、改めて、大きな使命を受けたと認識しております。「環境王国」を標榜する対馬市といたしましては、未来永劫、この豊かな自然環境を保全すべく、市民皆様とともに力を合わせてまいりたいと考えております。

 平成30年度予算は、平成29年度を国境離島対馬の「創生元年」と位置づけておりましたので、ステップの年となるよう、次の3施策を重点施策として編成しております。

 一つ目の「移住・定住支援対策」でございますが、移住・定住支援を人口減少対策の重要施策として位置づけており、取り組みを加速させます。
 昨年6月に、しまづくり推進部に相談窓口コーナー「しまぐらし応援室」を立ち上げ、これまで数多くの相談を受けており、新規就農、就漁などを含め、128件の実績でございます。今年度は、更に情報の発信、受入体制の整備推進を図るため、各担当部局との情報共有、事業連携を図りながらきめ細やかな支援を行い、移住・定住に結びつけてまいります。
 また、空き家バンク制度の推進や旧教員住宅を活用した移住・定住住宅の整備、空き家改修費、引越費用、家賃等の補助、さらに新規卒業生定着奨励制度などの移住・定住対策に積極的に取り組んでまいります。

 二つ目の「観光客受入対策」でございますが、昨年度の施政方針で申し上げました観光の掛け算の「歴史」に関しては、昨年のユネスコ記憶遺産の登録により、市内に多く残る歴史遺産の一部分が世界的にも証明されました。また、「食」についても、まぐろ、穴子、ノドグロ、しいたけなど対馬ブランド化が進んでおりますが、その一方で、「観光」の面からは、観光地におけるトイレや観光案内板の整備充実など、課題が大きく表面化し、掛け算による観光立島実現には手が届いておりませんので、その取り組みを強化してまいります。
 加えて、有人国境離島法における島民以外の方への運賃低廉化の実現に取り組み、さらなる交流人口の拡大を目指します。

 三つ目の「産業振興による雇用の場確保対策」でございますが、昨年4月の「有人国境離島法」の施行により、航路・航空路運賃の低廉化、農水産物の輸送コスト支援なども相まって、雇用拡充支援事業では、市内において、約80名の雇用の場の確保につながり、地域活性化に成果があったものと思います。
 これらの成果を踏まえ、平成30年度の有人国境離島法関連事業は、その事業規模を約16億5千万円と拡充いたしました。
 また、一昨年11月に運用を開始した「返礼品付きふるさと納税」における寄附金額は、30年3月末において1億5千万円を超える見込みであり、今後も寄附金の増額に向け、返礼品の充実等に取り組んでまいります。

 次に、日韓の民間団体が共同申請しておりました「朝鮮通信使に関する記憶」が、昨年10月にユネスコ記憶遺産に登録されました。これを契機に、平和の使者である「朝鮮通信使」が最初に降り立った地が対馬であることとその使節団を江戸まで案内するなど対馬藩の功績を広く世界に発信してまいりたいと考えております。

 次に、増加し続ける韓国人観光客等に加え、国内からの観光客を誘致するために、対馬の自然と地理的特性を活かしたトレッキングコースやサイクリングコースの整備、観光満足度向上のため、トイレや休憩所等の基盤整備を鋭意進め、観光を一大産業として確立する取り組みを行ってまいります。

 また、対馬市の人口は、平成32年にかけて3万人を下回り、平成29年に35%であった高齢化率は、12年後の2030年は50%を超えることが予測されております。
 その中、誰もが住み慣れた地域で自分らしく生き生きと暮らし、人生の最期の時を迎えることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築と、健康づくり支援対策に積極的に取り組んでまいります。

 近年の予測しがたい異常気象による風水害や地震災害等に備え、市民の生命・身体及び財産を守るため、また、朝鮮半島における政情不安を踏まえ、国、県との連携を強化し、これらの事態に即時対応する部署を設置いたします。

平成30年度の予算編成

 平成30年度予算は、これらの重点施策及び有人国境離島法に係る施策を中心に、対馬ならではの地域の活性化を図り、高齢者の健康支援、福祉の充実を目標に編成いたしました。

 その概要をご説明申し上げます。

 予算規模でございますが、一般会計予算と7つの特別会計予算を合わせた予算総額は、416億5,912万4千円となっております。
 また、地方公営企業法の適用を受けます水道事業会計は、

  • 収益的収入 12億327万7千円
  • 収益的支出 10億2,657万6千円
  • 資本的収入 1億5,810万円
  • 資本的支出 5億5,043万6千円

としております。

 一般会計につきましては、平成29年度当初予算と比較いたしますと2.6%増の317億8,300万円としております。
また、国民健康保険特別会計につきましては、国民健康保険制度改革により、平成30年度から県がその財政運営の責任主体となることから、予算額が46億9千万円と対前年比22.4%の減となっております。
 次に、歳出予算についてご説明申し上げます。
 まず、主な取り組みについてでございますが、第2次対馬市総合計画に掲げる将来像の「4つの挑戦」を柱に、予算編成をいたしました。

 まず、1番目に、"若者でにぎわう希望の島"
 ~ひとづくり~ への挑戦でございますが、

 大学と地域を結びつける域学連携地域づくり推進事業においては、市民・研究者・行政が、共に知恵をしぼり、汗を流し、対馬について学び考える「対馬学フォーラム」を引き続き開催し、将来を担う若者と交流しながら、人材の育成と交流人口・定住人口の拡大を目指します。
 新たに、地域連携プロジェクト事業として、都市部大学のサブキャンパス設置に向けた情報収集など行い、連携システム構築に取り組みます。

 子どもは、対馬の将来を担う大切な宝です。子どもを産み、育てやすい環境づくりのため、「子ども・子育て支援制度」を円滑に実施するとともに、子どもの出産や育児、地域における子育て支援事業、子育て家庭の経済的負担の軽減を図るため、中学生までを対象とした子ども医療費助成事業及び保育料の軽減等を引き続き実施してまいります。
 子育て世代が、親御さんと同居することで、安心して子どもを産み育てられる環境を整えるため、その思いを「三世代同居・近居促進事業」により支援してまいります。

 学校教育の充実につきましては、いじめや不登校など、児童生徒を取り巻くさまざまな問題に対応するスクールソーシャルワーカーを継続して配置するほか、教育相談員、介助員等を増員し、児童生徒一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかな支援を行います。
 小・中学校の修学旅行費及び学校給食費の助成については、教育基本法に定める教育機会の均等を基本として、国庫補助対象外となるへき地級地の小中学校児童生徒に、単独費による支援を引き続き実施してまいります。
 また、変化し、進展を続ける高度情報化社会に対応できる資質や能力を育むため、学校ICT化を推進し、中学生一人ひとりにタブレットを配付し、併せて小学生には将来のICT化に備えるための環境整備を実施してまいります。
 学校施設の環境整備につきましては、児童生徒が安全で安心して快適な学校生活を送ることができるよう、トイレの洋式化、有害鳥獣対策フェンスの設置など計画的に実施してまいります。
 離島の中学生が野球を通して集い競う「(通称)離島甲子園」は、前身の大会から数え、昨年度まで13回開催されてきました。大会の目的である青少年の健やかな成長を育むために、本市といたしましても、平成19年の地元開催以来、2回目の誘致を実現できるよう設備環境の整備が求められており、その受入の環境整備のため、市内の野球場の改修に取り組みます。
 さらに、ふるさとを思う心を繋げていく取り組みとして、昨年、初めて開催いたしました子ども議会の実施やふるさと学習など子どもたちへの郷土愛の育成を図ってまいります。

 2番目として、"地域経済が潤い続ける島"
 ~なりわいづくり~ への挑戦でございますが、

 産業基盤整備のため、道路交通網の整備をはじめ、林道整備、漁港・漁場整備事業等を実施するとともに、次世代の担い手育成、生産物の価値を上げるための6次産業化など魅力ある産業基盤づくりを進めるとともに、対馬地域商社の整備を図り、地元産品の発掘、販路拡大に取り組みます。

 農林業においては、農地の集積・集約化を進める農地中間管理事業、対馬ブランド「しいたけ」の振興を推進するため、對馬椎茸やる倍ナバダス計画事業、肉用牛多頭飼育経営促進事業などに取り組み、農林業の再生と維持を図ります。

 対馬の基幹産業である水産業においては、資源管理・環境保全対策として、磯焼け対策・漁場造成事業を推進するほか、漁業共済掛金助成金の補助率の嵩上げ、漁業集落の維持を図るための特定有人国境離島漁村支援交付金事業の拡充、水産物流通拡大のための水産物試験輸出事業補助金など、水産業振興のための施策を引き続き実施してまいります。

 それらの後継者対策については、農林水産業従事者担い手・林業女子育成及び人財発掘事業や漁業後継者育成事業を引き続き実施し、人材確保の推進強化を図ります。
 また、農林水産物の輸送コスト支援事業につきましては、有人国境離島法を最大限に活用し、生産者の支援を図ってまいります。

 人口の減少が続く本市において、経済の活性化と交流人口の増加を図ることは重要です。対馬のあらゆる魅力を有機的に繋げた情報を発信し、国内・国外から対馬への観光客誘致にさらに取り組み、観光業の活性化を引き続き推進します。

 旅行者にもう一泊してもらうため、滞在型観光促進事業を活用した旅行商品の企画・販売を実施し、日本の渚百選に選ばれた「三宇田浜」において、キャンプ場などを含む周辺整備の設計等に着手するほか、観光資源の開発・情報発信などに積極的に取り組みます。
 また、観光客の受入体制を整備することが喫緊の課題であり、特に、観光客利用トイレにおける課題解決のため、島の中央部を整備候補地として測量・設計に着手いたします。また、日本遺産ストーリー案内板を含む観光案内板の充実、トレッキングコースの整備に取り組むなど、観光客の満足度向上への取り組みを行ってまいります。
 昨年、プレイベントとして実施した「国境サイクリングIN対馬」については、プレイベントの検証を踏まえ、本格実施いたします。島外からの参加者の皆様には、対馬を五感で楽しみながら、北の玄関口「比田勝」から南の玄関口「厳原」までを縦走し、島を満喫していただきたいと考えております。
 このイベントは、対馬全島をイベント会場とし、島民のご支援とご協力があってはじめて成功する「協働」を象徴するイベントとして位置づけておりますので、再び、オール対馬で取り組みたいと考えます。
 対馬観光の情報発信の拠点である「よりあい処つしま」「ふれあい処つしま」を活用して、国境のしま対馬を発信してまいります。

 3番目として、"支え合いで自立した島"
 ~つながりづくり~ への挑戦でございますが、

 対馬市の現在の高齢化率は35%にのぼり、2030年には50%を超えることが予測されております。高齢者が住み慣れた地域で、生き生きと暮らし自分らしい人生を送り最期の時を迎えることができる社会を目指す「地域包括ケアシステム」の構築に向け、精力的に取り組みます。
 国内においては、平成37年には65歳以上高齢者で介護を必要とする人のうち、認知症高齢者の数だけでも470万人に達すると予想されております。いかにして、高齢者の健康寿命を平均寿命に限りなく近づけることがこのシステムの目指すところであります。

 認知予防のため、地域で支え合う認知症地域支援推進事業として、認知症初期集中支援推進員の配置や認知症サポーターの養成など認知症対策に取り組むと共に、高齢者の集いの場を地域などが確保する際、その施設改修費などの一部を支援してまいります。
 現在、豊玉町において、モデルケースとして取り組んでいる介護予防生活支援コーディネーター事業についても、各町に展開してまいります。

 また、厳原町を中心に組織、活動されてきたミニシルバー人材センターの全島組織化を図るため、推進スタッフを配置し、取り組みを強化してまいります。

 一方、ハード整備に係る取り組みでは、旧対馬いづはら病院跡施設の空きスペースを健康増進施設としての活用等について、市民代表をメンバーとする検討委員会を立ち上げ、研究を進めておりますので、できる限り早い時期にその方向性をお示しできるよう努めてまいります。

 特に、上対馬地区にお住まいの方の悲願でもございます高速船の混乗につきましては、今一歩のところまで協議が整っております。近々、嬉しい報告ができるものと大きな期待を抱いており、最後の詰めに力を注ぎます。
 公共交通については、地域が運営主体となるコミュニティ交通の拡大、予約制市営バスの検討、スクールバスの活用拡大など効率的な運行体制の構築に取り組みます。

 さらに、交通弱者支援対策として、高齢者の通院・買い物等の交通費を支援する高齢者移動費助成事業や、近年、社会問題となっております高齢者の運転による交通事故の減少を図るため、運転免許証自主返納支援事業を引き続き実施し、併せて事業の検証も行ってまいります。

 市民が「対馬(しま)づくり」に積極的に参加していただくためには、市政や地域の状況を有機的に情報共有することが重要です。市民への情報提供の充実、様々な手段による情報発信に努め、市民協働のまちづくりを推進いたします。
 なお、市民皆様から市政に対する提言をいただく「市長への提言 かっちぇて ! しまづくり」を引き続き取り組むほか、自ら、積極的に地域へ出向き市民の皆様と膝を交えた語らいの機会を設けてまいります。

 4番目として、"自然とくらしが共存した島"
 ~ふるさとづくり~ への挑戦でございますが、

 市民皆様の生命財産を守り、安心安全なまちづくりの推進のため、危機管理体制の充実に取り組んでまいります。また、地域防災の基本である共助の受け皿となる自主防災組織の結成及び充実のための支援をはじめ、防災施設整備や災害時の防災用備蓄物資の確保に取り組みます。
 常備消防力の充実を図るために、新たにブーム付多目的消防車の導入、非常備消防の施設整備などに取り組んでまいります。

 昨年10月末にユネスコ記憶遺産に登録された「朝鮮通信使に関する記憶」は、貴重な市民の財産であり、それを後世に伝えていくことは我々の責務であります。
 この貴重な市民共通の財産に関する情報を効果的に発信し、国内外からの誘客へと繋げていくため、工事着工いたしました博物館建設をはじめ、朝鮮通信使案内板整備、記憶遺産登録PR事業など朝鮮通信使によるまちづくり事業などに取り組んでまいります。
 また、本年は、「誠信外交」の象徴である雨森芳洲先生の生誕350年に当たり、その顕彰事業も実施いたします。

 生ごみ等資源再利用システム事業につきましては、協力世帯の目標数達成に向け、さらに取り組みを強化し、生ごみの分別収集の推進を図ります。
 国境離島であるがゆえの問題でもある、海岸漂着物等地域対策推進事業についても引き続き取り組むとともに、一般廃棄物処理施設である対馬クリーンセンターの基幹改良整備を行い、維持コストの削減を図るとともに施設の長寿命化に取り組んでまいります。

 有害鳥獣対策につきましては、従来の駆除対策を実施するとともに、区域を設定したイノシシ・鹿の一斉駆除を実施いたします。

 次に、これらの事業を実施していくために充当する歳入予算でございますが、主な内容として、市税は、法人税、固定資産税の減収などにより前年度比3.8%の減を見込んでおります。
 地方交付税は、国の地方財政計画において、対前年度比マイナス2.0%、3,213億円の減となっており、また、「まち・ひと・しごと創生事業費」に対応した算定方法の見直し、業務改革を反映した経費水準を算定に反映させる「トップランナー方式」などの算定方法の変更があり、配分・算定方法等が不透明な状況であることを考慮して、前年比5.4%の減を見込んでおります。
 さらに、財政調整基金、減債基金、合併振興基金などから約18億8千万円を繰入れるほか、財源補填のある辺地対策事業債、過疎対策事業債、合併特例事業債など約50億2千万円の市債を計上しなければならない厳しい予算編成となっております。

 加えまして、歳入の大部分を占める地方交付税の合併優遇措置の段階的縮減が平成26年度から始まり、最終年度である平成30年度は90%縮減となります。この段階的縮減は、合併により面積が拡大するなど市町村の姿が大きく変わったことにより、一定の緩和はされているところですが、依然として厳しい財政運営に変わりはありません。
 このような状況を踏まえながらも、平成30年度予算編成に当たりましては、これまでの継続事業の実施、高齢化社会に備えるための事業、時代のニーズに応えるための事業の実施など、対馬市独自の施策を限られた財源の中で可能な限り計上したところであります。

おわりに

 以上、市政運営に対する所信の一端と平成30年度の事業内容等について申し述べましたが、今後も、第2次対馬市総合計画に掲げる「みんなで目指そう!自立と循環の宝の島 対馬」を目標とし、様々な行政課題の解決のため、財政の健全化に努めながら、市民協働・市民主体のまちづくりに全身全霊をもって取り組んでまいります。
 また、目標実現には、市民と議会と行政がスクラムを組んで行政運営を推進していくことが重要であると考えますので、市民の皆様、議員各位の市政に対するご理解と、なお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、施政方針といたします。

 平成30年2月27日
 対馬市長 比田勝 尚喜

この記事に関するお問い合わせ先

総務課

〒817-8510
対馬市厳原町国分1441番地
電話番号:0920-53-6111
ファックス番号:0920-53-6112

メールフォームからお問い合わせをする